現役コンサルによる中小企業診断士試験対策&資格取得後のキャリア形成に関するブログ

【このブログの説明】
このブログでは、複数社のコンサルティングファームを渡り歩いた現役のコンサルタントが、中小企業診断士試験合格に向けたベスト戦略、中小企業診断士資格取得後のキャリア形成に関する情報を発信していく。コンサルティング経験に基づく本質的なコンサルティングスキルをベースに、独自の分析に基づく試験情報や経営コンサルタントとしてのキャリア形成上の要諦を公開していく。 読者が真の経営コンサルタントとして活躍できるような一石を世に投じられること、これを私の日々の目標とし、筆者自身もこのブログとともに成長していきたい。

【2次試験】「ファクトベースで作られた答案」とは?(後編)

今回は2018年度の2次試験突破を目指す受験生に向けた記事である。


【2次試験】「ファクトベースで作られた答案」とは?(前編)」では、あなたに例題を提示し、答案の方向性を考えてみてほしいという宿題をお出しした。


そして「2次試験】「ファクトベースで作られた答案」とは?(中編)」では設問解釈を通じて、以下の3点のポイントを抽出した。

・問われていることは「成果主義型賃金制度の設計および導入にあたっての留意点」である。

・成果主義型賃金制度の導入対象は「日本国内の課長以上の社員」である。

・「成果主義賃金制度の設計」と「成果主義賃金制度の導入」の両面から答案を検討する必要がある。



今回は上記を踏まえ、答案の方向性に関してヒントになる内容を書いて、あなたの思考力を鍛錬しようと思う。



まずは例題を振り返ってみる。


(与件文抜粋)
 もっとも、(A社にとって)品質の安定的な維持・確保は、非正規社員の多い日本の工場でもいまだに課題である。工場内の食堂など社員が集合する場所に、管理部、業務部、品質保証部、製造部の 4 部門各 2 課の目標と達成度合いを記した情報を掲示し、部門間や従業員同士の情報共有を促すとともに、社長自らが率先して、日々、意識改革やシステム改善に取り組んでいる。


(設問)
A 社は、日本国内で課長以上の社員を対象に成果主義型賃金制度を導入しようと考えている。中小企業診断士として、制度の設計および導入にあたって、A 社の場合、どのような点に留意すべきかを120 字以内で助言せよ。

(平成24年度中小企業診断士2次試験 事例Ⅰ)


まず当該段落の与件文を見ると、以下の文章に目が行く。


品質の安定的な維持・確保は、非正規社員の多い日本の工場でもいまだに課題である。



ここから2点のことがわかる。


1つめは、課題が「品質の安定的な維持・確保」であること。課題である以上、それを解決せねばならないことを認識する。

2つめは、「非正規社員の多い日本の工場でも」の「日本の」である。設問文を読むと、「A社は、日本国内で課長以上の社員を対象に成果主義型賃金制度を導入しようと考えている。」と書かれている。この与件文と設問文を対照することで明らかなことは、「日本の」と「日本国内で」が対応しているということである。つまり、この時点で、本設問の根拠はこの段落が対応する可能性に対してかなりの確信を持つことができる。



この2つを通じて論理的に導出されるのは、


日本国内における品質の安定的な維持・確保という課題を解決することが、成果主義賃金制度の導入の狙い


という仮説である。



続く与件文を精読する。

工場内の食堂など社員が集合する場所に、管理部、業務部、品質保証部、製造部の 4 部門各 2 課の目標と達成度合いを記した情報を掲示し、部門間や従業員同士の情報共有を促すとともに、社長自らが率先して、日々、意識改革やシステム改善に取り組んでいる。


この時点で、この文には大別して2つの要素があることに気づかねばならない。


【要素①】
(A社は)工場内の食堂など社員が集合する場所に、管理部、業務部、品質保証部、製造部の 4 部門各 2 課の目標と達成度合いを記した情報を掲示し、部門間や従業員同士の情報共有を促している。


【要素②】
(A社は)社長自らが率先して、日々、意識改革やシステム改善に取り組んでいる。



「~とともに…」という連語をしっかり意識することができれば、上記要素を一緒くたに見るということはなくなるだろう。
※この辺の内容は、「中小企業診断士2次試験対策【勇者の読解】~基礎力養成編」で解説している。




では、2つの要素に対して検討してみる。


【要素①】
「工場内の食堂など社員が集合する場所に、管理部、業務部、品質保証部、製造部の 4 部門各 2 課の目標と達成度合いを記した情報を掲示し、部門間や従業員同士の情報共有を促す」



この文から読み取れること(ファクト)は、以下の2点。


・要素①の実施目的は、「部門間や従業員同士の情報共有を促すこと」である。

・上記目的を達成する手段として、「工場内の食堂など社員が集合する場所に、管理部、業務部、品質保証部、製造部の 4 部門各 2 課の目標と達成度合いを記した情報を掲示」している。



ちなみにこの要素①の目的は「部門間や従業員同士の情報共有を促すこと」にあるが、その先の更なる目的は何かわかるだろうか?



それはもちろん課題である「品質の安定的な維持・確保」である。



ここで合点がいく。



「品質の安定的な維持・確保」のためには、「部門間や従業員同士の情報共有を促すこと」が重要である。


そのために、「工場内の食堂など社員が集合する場所に、管理部、業務部、品質保証部、製造部の 4 部門各 2 課の目標と達成度合いを記した情報を掲示」しているということである。



ここまでのファクトはよいだろうか?



以上を踏まえた上で、A社が成果主義賃金制度を導入する場合、留意すべき点はないだろうか?



成果主義賃金制度の特性を覚えている受験生はおわかりだろう?



そう。個人目標の達成を優先しがちになるんだった(一次知識)。



そのような特性の制度をそのまま入れてしまったら、「部門間や従業員同士の情報共有を促すこと」なんてできるのだろうか?



この辺りが解答上の論点になりそうだ。




【要素②】
「社長自らが率先して、日々、意識改革やシステム改善に取り組んでいる。」


この文からあなたに気づいてほしいことがある。



それは


「社長自らが率先して」という方法が本当に良い方法なのだろうか?


という素朴な疑問である。



もちろん社長自身が率先して意識改革やシステム改善に取り組むこと自体は悪いことではない。


しかし本来的なあるべき姿を考えると、社長は戦略的意思決定に集中して、意識改革やシステム改善はミドルマネジメントに権限移譲する方がよりベターなやり方と言えるだろう(一次知識を踏まえた仮説)。



以上を踏まえてA社のあるべき姿を仮説として検討すると、「ミドルマネジメントが意識改革やシステム改善に取り組む」という1つの方向性が導出される。



ん?ミドルマネジメント?どこかで似たような表現を見たような…。



お、設問文に「日本国内で課長以上の社員を対象に成果主義型賃金制度を導入しようと考えている。」と書かれている。



なるほど。



課長以上が進んで意識改革やシステム改善をするようなカラクリを仕込んでやれば、社長はハッピーということになりそうだ(仮説)。



ところで、意識改革やシステム改善って「改革するぞ」「改善するぞ」と言ってすぐにできるようなものなのだろうか?



後者はひょっとするとできるものもあるかもしれないが、少なくとも前者はすぐにできるような性質のものではない。



そうすると、これらは中長期的な取り組みになることが想定される。



以上を踏まえた上で、A社が成果主義賃金制度を導入する場合、留意すべき点はないだろうか?



ここも成果主義賃金制度の特性を覚えている受験生はおわかりだろう?



そう。短期業績志向に陥りがちで、中長期的取り組みが抑制されやすいのだった(一次知識)。



そのような特性の制度をそのまま入れてしまったら、「意識改革やシステム改善」は進むだろうか?


この辺りが解答上の論点になりそうだ。



ちなみに念のための確認だが、この要素②「意識改革やシステム改善」は何のためにやる必要があるのかわかるだろうか?



もちろん、これもまた課題である「品質の安定的な維持・確保」である。




おっと。設問解釈で抽出した以下の要素を忘れてはいけない。


・「成果主義賃金制度の設計」と「成果主義賃金制度の導入」の両面から答案を検討する必要がある。



上記で論点になりそうな要素は要素①と要素②の2つ。そして設問要求は成果主義賃金制度の「設計」と「導入」2つの面から検討する必要がある。


もし設問に対してシームレスに回答するのであれば、どちらかを設計面に織り込んで、どちらかを導入面に織り込むのがよさそうという察しがつく(仮説)。




以上で「【2次試験】「ファクトベースで作られた答案」とは?」は終了である。



え?マジコンの解答例は出さないのかって?



もちろん当該過去問に対する筆者なりの解答例は手元にあるが、それを出すとあなたの思考プロセスを止めてしまう。


そのデメリットの方が筆者は大きい思うので、本連載においては解答例は出さない方針としたい。




さて、3回に渡り本連載をお届けしたが、いかがだっただろうか?



筆者としては可能な限りファクトに基づいて答案の方向性を導出するプロセスを書いたつもりである。



もちろん、そのプロセスに筆者の仮説や1次知識が入り込んでいるため、その内容に対して納得がいかない読者もいることだろう。



それはそれでよいと思う。



なぜなら、2次試験というのは国語の試験ではないので、ファクトを抜き出すだけで答案を構成できる問題はごく一部だからである。



あなたが納得がいかない仮説や利用した1次知識に対してあなたの対論があり、それをベースに本試験で闘って合格を勝ち取れるのであれば、どちらが正しい・間違っているといったことなど何ら意味をなさない。



むしろ筆者がここであなたに強調したかったことは、


与件文の要素を思考の起点としつつ、そこから導出されうる仮説と1次知識を活用しながら大事に答案を構成することの重要性


である。



少しでも本連載があなたの2次試験の学習の助けになれば幸いである。


マジコン診断士

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現役コンサルタント。中小企業診断士試験独学ストレート1発合格。モットーは卓越した本質的スキル・知恵に基づく”マジなコンサル診断士”であり続けること。
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